認知症の事例(重度)
モデルケース R子さんの場合
この事例は複数の事例を組み合わせるなどして構成したものであり、実際の事例とは名称、年齢、地名等は異なります。
R子さん(81歳)は、身寄りがなく、都内のマンションで介護サービスを受けながら一人暮らしをしていました。
ある日R子さんは買い物に出かけた際に転倒し、腰を骨折して入院しました。数ヶ月の入院で、R子さんの骨折は治癒しましたが、リハビリが思うように進まず、寝たきりから回復することができません。R子さんの症状が固定されたと考えられるため、病院は退院せざるを得ないのですが、自宅マンションでの生活に戻ることは不可能な状況で、更に、長引く入院生活のためか、R子さんの記憶力は急速に低下していました。
病院のソーシャルワーカーは、R子さんに介護施設への入所を勧めましたが、R子さんは「家に帰りたい」と繰り返すだけで、今後の生活について正常な判断ができる状態ではありませんでした。そこで、身寄りのないR子さんの施設入所の手続きや退院後の生活支援のために、成年後見制度を利用することになりました。
らいさぽの対応
「成年後見人」に選任されたライフサポート東京の後見事務担当者:頼さほ子さんは、R子さんと面談し、退院後の生活についての希望を聞きましたが、R子さんはやはり「家に帰りたい」と繰り返すだけで、在宅復帰が難しいことを説明しても会話がかみ合わず、理解してもらうのは困難でした。
頼さほ子さんはソーシャルワーカーと相談し、退院後のR子さんにとって適している施設として、医療ケアとリハビリを中心に介護支援を受けられる介護老人保健施設(老健)を選択、病院の退院と老健の入所手続きを行いました。R子さんの老健での生活が始まると、病院では寝たきりで病室から出なかったR子さんが、老健の介護士から頻繁に笑顔で声をかけられ、勧められて食事も食堂でとるようになり、他の入所者との交流も増えました。また、少しずつレクリエーションにも参加し、リハビリにも取り組みはじめ、移動はすべて介助が必要だったのが、車椅子で屋内を一人で移動できるようになりました。
老健での生活を見守りつつ、頼さほ子さんは、老健退所後の施設についても検討を続けました。R子さんの年金収入や預貯金は多くありませんが、自宅マンションを売却すればまとまった金額になります。頼さほ子さんは、家庭裁判所に「居住用不動産処分の許可申立て」を行い、許可を受けて自宅の売却を行いました。
そして財産と支出のバランスを考え、入所一時金と100歳くらいまでの施設利用料がまかなえそうな有料老人ホームをいくつか探してR子さんと見学に行き、R子さんが気に入った施設と入所契約を結びました。
その後
R子さんは今、郊外の有料老人ホームで介護を受けながら、「きれいなお花がいっぱいのお庭が素敵」と車椅子で毎日散歩に行くのを楽しみに、落ち着いた日々を過ごしています。