認知症の事例(重度)

モデルケース 田中良子さんの場合

田中良子さん(75歳)は、身寄りがなく、都内のマンションで介護サービスを受けながら一人暮らしをしていました。

ある日、良子さんは、買い物に出かけた時に転倒して腰を骨折し、半年入院することになりました。良子さんは、半年の入院により骨折は治癒しましたが、リハビリは思うように進まず寝たきりから回復することができません。病院からは、症状が固定されたと考えられ退院を求められましたが、自宅マンションへの在宅復帰は不可能な状況です。更に、長引く入院生活のためか、急速に記憶力も低下しました。

病院のソーシャルワーカーは、良子さんに介護施設への入所を勧めましたが、良子さんは「家に帰りたい」というだけで、今後の生活について判断できる状態ではありません。そこで、施設入所の手続きや退院後の生活支援のために成年後見制度を利用することとなりました。

らいさぽの対応

「成年後見人」に選任されたライフサポート東京の後見事務担当者である、頼さほ子さんは、良子さんに退院後の生活についての希望を訊ねましたが「家に帰りたい」というだけで、在宅復帰が難しいことを説明しても会話がかみ合わず、理解してもらうのは無理でした。

頼さほ子さんは、退院後の施設として、医療ケアとリハビリを中心に介護支援を受けられる介護老人保健施設(老健)への入所が、良子さんにとって良いのではと考えました。骨折は治癒しているので、リハビリがうまくいけば身体状況の改善が見込めます。老健は3か月から半年で退所しなければなりませんが、心身の状況の変化を見守りつつ、その後の生活施設を判断することにしました。

頼さほ子さんが病院の退院と老健の入所手続きを終え、良子さんの老健での生活が始まりました。病院では寝たきりで病室から出なかった良子さんは、介護士から頻繁に笑顔で声をかけられ、勧められて食事も食堂でとるようになり、他の入所者との交流も増えました。また、少しずつレクリエーションにも参加したり、リハビリにも取り組みはじめ、移動はすべて介助が必要だったのが、車いすでなら屋内を一人で移動できるようになりました。

老健での生活を見守りつつ、頼さほ子さんは、老健退所後の生活施設についても検討していました。良子さんの年金収入や預貯金は多くありませんが、自宅マンションを売却すればまとまった金額になります。頼さほ子さんは、家庭裁判所に「居住用不動産処分の許可申立て」を行い、許可を受けて自宅の売却を行いました。
そして財産と支出のバランスを考え、入所一時金と100歳くらいまでの施設利用料がまかなえそうな有料老人ホームをいくつか探して見学に行き、良子さんが気に入った施設と入所契約を結びました。

その後

良子さんは今、郊外の有料老人ホームで介護を受けながら、「きれいなお花がいっぱいの庭がすてき」と車いすで毎日の散歩に行くのを楽しみに、落ち着いた日々を過ごしています。

この事例は複数の事例を組み合わせるなどして構成したものであり、実際の事例とは名称、年齢、地名等は異なります。

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